世界での力関係による『ブレトンウッズ体制』
1ドル=200円が、1ドル=100円になると「円高」と言いますよね。
でも200円が100円に安くなるのに、円高ってどうゆうこと?と思ってしまいますよね。
『円高』というのは、「ドルに対して、円の価値が高いこと」を言います。
今まで200円と交換できていた1ドルが、ある日、100円出すだけで交換できるようになったというのは、これは円の価値が上がったからだと言えますよね。
この円の価値が上がった状況を、「円高」と言うのです。
では、現在なぜドルが世界の基準なのでしょうか。
やはりそこは、世界における力関係によるようなのです。
昔は、イギリスの力が強く、ポンドが世界の通貨となっていました。
しかし。第二次世界大戦後、ドルが力を持ち始めました。
世界大戦中、ヨーロッパは、戦場になったため生産ができなくなっていましたが、アメリカは戦場にならなかったため、商品を生産し、世界中に輸出し、富を蓄えることができたからです。
1944年、45カ国の金融担当者が、ブレトンウッズというリゾート地に集まって、ドルを『世界のお金』にすることに決めました。イギリスの金融担当代表は、ケインズでした。
この戦後の国際通貨体制のことを、『ブレトンウッズ体制』と言います。
そして、いつでも金と交換ができると安心ということで、1オンスの金を35ドルで交換できるようにしたのでした。
日本も戦後、ブレトンウッズ体制に入ったのです。
そして、1ドル=360円で取引できるようになったのでした。
ブレトンウッズ体制では、
『国際通貨基金』と、『世界銀行』という、世界のお金の流れに混乱を起こさないための2つの仕組みが作られました。
特に戦後の日本は、世界銀行の恩恵を受けており、低金利でお金を借り、新幹線や東名高速道路、黒部ダムなどを建設するのに使えました。
戦後の日本が飛躍的な成長を遂げた背景には、
こうした「ブレトンウッズ体制」の恩恵があるのでした。
なお、この世界銀行からの借金は、1990年代に完済したのです。
かつては、『1ドル=360円』と決まっていた?
ニクソンショックの前までは、日本の円は、「1ドル=360円」で固定されていました。
1ドルは、円にして幾らかということが必ず決まっていたのです。
この通貨ごとの為替レートが決まっているものを、『固定相場制』と言います。
それに対して、現在のように、いつもひっきりなしに相場が動き、原則として需要と供給により為替レートが変動するものを『変動相場制』と言います。
いつも変動するためニュースとなるわけなのです。
ニュースの放送中に、「今日の外国為替市場は、1ドル=◯◯円・・・」と言っている側で、「今変わりました」と変動し、更新されることがあるのです。
円高について理解する上で、私たちが気づくべきことは、やはり経済は全て、需要と供給によって動くのだということです。
その原理を改めて感じていかないといけません。
また、人の心理や思惑によって世の中は動いていくんだなということを知っていく必要があります。
円高が、日本経済に与える影響というのは、どのようなものなのでしょうか。
『1ドル=360円』のレートは日本経済発展のために決められた?
なぜ、1ドルが360円だったのでしょうか?
それは戦後、日本は連合国軍によって占領されていましたが、やがて日本とアメリカの間で貿易が再開され、1ドルをいくらにするかを決めることになったことがありました。
なお、明治の初め黒船がやってきて、日本が開国し、アメリカと貿易が始まった時は、
『1ドル=1円』で固定されていました。
たまたまですが、両国とも金本位制を取っていて、1ドルで買える金の量と、1円で買える金の量がほぼ同じだったのです。
その後、アメリカの経済がどんどん強くなり、1ドルが2円になりました。
さらに、第二次世界大戦の敗戦で、日本の国力がすっかり弱り、1ドル=2円と言う交換はできなくなりました。
そこで、アメリカの調査団がやってきて日本経済について調べた結果、当時の日本の経済力では、『1ドル=320〜340円』くらいがふさわしいだろうと言う報告書をまとまたのでした。
またこの時、すでに東西冷戦が始まっており、日本のすぐ近くでは、北朝鮮が社会主義国になり、ソ連も中国も社会主義をどんどん推し進めようとしていました。
アメリカとしては、仲間である日本の経済を発展させることが、アジアのショーウィンドウになると考え、資本主義は素晴らしいというモデルとして復興させたかったのです。
資本主義で経済が発展する、日本をそのモデルにしたいと、日本の経済を発展させるためには、日本に有利なレートにした方が良いわけなのです。
またそれであれば、1ドル=320〜340円よりも、360円にした方が日本にとって有利となります。すなわち、本来の円の実力よりも安いレートにしてくれたのでした。
1ドル=360円ということは、1ドル出せば、360円の物が買える、「超円安」です。
日本の経済を発展させるために『1ドル=360円』と言う、輸出に非常に有利な円安な交換レートに設定してもらったことによって、日本は輸出大国となり、どんどん発展していくことになりました。
スミソニアン体制で、一気に52円も円高になった?
では、ずっと1ドル360円の円安であった日本が、なぜ現在は、円高になっているのでしょうか?
それは、アメリカのドルを使いすぎたからなのでした。
アメリカは当時、社会主義国であった、ソ連や中国に対抗するために、1950年の朝鮮戦争や、1960年頃からのベトナム戦争などに大量のドルを注ぎ込んでいたのでした。
そして、それを見ていたイギリスやフランスは、そんなにドルをばら撒いていては、お金がなくなるのではないかと不安になりました。
元々、ブレトンウッズ体制は、ドルと金を替えてくれる『金本位制』だったわけなので、金と替えられる安心感でドルを持っていたので、各国はドルと金を先に替えてしまおうとしたのでした。
アメリカも初めはそれに応じて金と替えていたのですが、そのうちに金が無くなってしまうことにアメリカは気付きました。
とうとう1971年にニクソン大統領が金とドルをもう交換しないと宣言したのでした。
これを『ニクソンショック』と言いました。
このニクソンショックにより、それ以降、ドルが金と交換できなくなり、ドルの信用は一気になくなりガタ落ちし、相場は変動していくことになったのでした。
その結果、世界中で大混乱が起きたため、1971年12月に急遽アメリカ・ワシントンのスミソニアン博物館で、緊急会議として、先進10カ国蔵相会議が開かれました。
この会議で、世界各国のお金を1ドル幾らにするかと言う相談が行われました。
それにより合意され決まった新通貨体制を『スミソニアン体制』と言います。
これは、固定為替相場制の維持を目指した。
この時、ブレントンウッズ体制から、スミソニアン体制に変わり、
1ドル=308円に引き上げられました。
1ドル360円から、一気に52円も円高になりました。
このニュースを聞いた多くの日本人は、キツネに摘まれたような思いをしました。
360円が308円になったと言うことは、360円出さないと買えなかった1ドルのチョコレートが、308円で買えるようになったわけなのです。
と言うことは、円の価値が高くなったわけであり、円高となりました。
このスミソニアン体制でもう一度、世界各国のそれぞれのお金が1ドル幾らかという組み直しをしたのですが、しかしもうドルを持っていても、金と換えてもらえないためドルに対する信用が無くなっていき、もっとドルが下がるのではないかという思惑が起こり、世界経済が混乱を始めたのでした。
そこで、混乱を避けるために相場の固定をやめよう、と、いつでもその時の需要と供給によって値段が変わるようにしようということになったのでした。
そして、1973年ついに『変動相場制』になったのでした。
その結果、1ドル308円が、300円になり、290円、280円と徐々に円高になっていったのでした。
ドルが安い時に買って、高くなったら売れば儲かると言った、
変動相場制になったことにより、『お金』が、『商品』になったのです。
『産業の空洞化』円高が招く工場の海外移転
円高が進むのはなぜか、円高はいけないことなのでしょうか?
日本の輸出産業にとってはというと、円高はとても困ったことですね。
1ドル240円なら、1万ドルの車を1台売れば240万円の収入になりますが、
1ドル120円なら120万円の収入にしかならないのです。
ですが、逆に輸入産業や海外旅行者にとっては、円高がお得なのですね。
1ドル120円なら、1万ドルの商品が120万円で買えますが、1ドル240円なら240万円しますよね。
また日本は、円高によって、国際レベルではお金持ちになっています。
かつて、1ドル360円であったのが、今110円であるとすると、この間ずっと円を持っていれば、ドルで言うと、約3.3倍も増えたと言うこととなり、海外旅行でも安いと思うことが多くなるかと思います。
円高がいけないのかというと、必ずしもそうではなく、立場によって見え方が変わると言うことですね。
ではなぜ円高が進むのか?といったメカニズムはなぜでしょうか?
それはと言うと、例えば、品質が良く、安いものを作って輸出して製品が売れたとするときに、その対価はドルで支払われます。
ただし、給料や材料は日本で円で支払わなければいけません。
そうなると日本の輸出企業は、ドルを売って円を買うのです。
この時、円高だと支払う時点で損してしまいますよね。
これを繰り返すうちに、ますます円高が進むという悪循環になるという流れです。
では、円高を進ませないために給料をドルで払えばいいのか?
日本人のお給料をドルで払うわけにはいかないため、ではそもそも外国人を雇いましょうとなると、その手も考えられます。
例えば、自動車産業がアメリカに工場を作って、アメリカ人を雇って車を作れば円高とは無関係に利益を上げることができますね。
労働力の安い、ミャンマーやベトナムなどのアジアだとさらに儲かると言うことですね。
しかし、こうやって円高を恐れて、皆んなが海外を拠点にしだしてしまうと、国内の産業が衰退してしまうのです。日本人の雇用もなくなり、日本の産業にぽっかり穴が空いたようになってしまいます。
このことを、円高によって引き起こされる困った現象として、『産業の空洞化』と言います。
日本全体がシャッター通りになるようなものと考えたイメージだと会うかもしれません。
海外に商品を輸出している産業、例えば自動車産業が良い例かと思うのですが、円高が進むと一生懸命ものを作って売ってもあまり利益が上がらなくなるため、いっそのこと海外に出てしまった方が良いのではないかと考えます。
円高ドル安ということは、アメリカの労働者に支払う給料が円で考えると以前に安くなっているわけなのです。それであればアメリカに工場を作って、アメリカの労働者を雇って、自動車を製造すれば円高に左右されずに利益が上がるのです。
このようにして、日本の企業がどんどん海外へ出ていってしまったのでした。
人件費が安いという点で言えば、アメリカより中国があり、中国で商品を作って、日本に輸入するという形を取れるのです。
中国もだいぶと経済が発展して人件費が上がり始めているため、最近はベトナムあたりに工場が工場が移ったりもして来ています。
本来であれば、日本国内の工場で、日本人を雇うことで国内の経済が発展していくはずですが、
それが海外に流出してしまえば、国の産業にぽっかりと穴が空いてしますわけですね。
これが「産業の空洞化」です。
国内の工場で働くはずだった人たちは、働き口を失うことになります。
それぞれの企業にとっては、海外移転が最善の判断であっても、企業がみんなそれをやると日本国内にとっては困ったことが起き、ある種の「合成の誤謬」がここでも起きているということですね。
これを食い止めるにはどうしたら良いのでしょうか?
安上がりの商品を作るのであれば、断然、海外の方が有利で、人件費が違いすぎます。
中国やベトナムに行けば、日本の何分の1、何十分の1となり、そうなると安さで勝負しても、到底勝ち目はありませんね。
短期的に儲けだけ追求して、国の産業が弱体化するのは避けて、日本でしか作れないもの作りを行っていくことが大事で、高くても皆んなが買ってくれるもの、そう言ったものに特化していかなければ、日本の産業は非常に苦しいということなのです。
日本の伝統工芸などが危機にある現代ですが、一つでも多く、日本産としての価値を再定義し、海外へ輸出していくことができればバブルの再来も起こし得るかもしれないですね。
僕も頑張ります。
一緒に頑張りましょう٩( ‘ω’ )و